急速に死ぬ事

その人は目がチカチカするから横にならせて、と言って目を閉じた。
私は丁度夕飯の支度をしなきゃならないし、と思って台所へ向かった。
その人は大きないびきをかきながら寝ていて
普段とは違うなぁと思いながらも、そのままにしておいた。
突然轟音が聞こえたので私は驚いてその人の元へ向かうと
額からは大量の汗を流し、何度呼んでも反応が無いその人が居た。

急いで救急車を呼んだのが夜の6時
その人は植物人間になってしまうと言われ
延命装置をはずされたのがその4時間後。

次の日の朝、母からメールが来た。


ショックです。美保さんちのおばさんが亡くなられました。
突然すぎて未だに信じられません。



人が亡くなるときは不思議な現象がよく起きる。
この半年間でおばさんの親族が3人も亡くなり
母は喪服を貸していた。
おばさんはそれを返す為にクリーニングに出した。
その次の日おばさんは居なくなった。

子供の美保ちゃんとその子供(孫)が帰省していて
また茨城の家へ戻る時、いつもだったら最寄の駅までしか見送らないのに
その日に限って一時間かけて名古屋まで見送った。
その次の日におばさんは居なくなった。


午前中美容院にでかけて
綺麗な姿のまま母の前で倒れた。


父が今の家を売って引っ越したいとい言った。
でも母はおばさんが居るから引っ越すつもりは無いようだった。
でももうおばさんは居ない。
引っ越すには十分の理由だ。



急いで実家に帰ると母が倒れていた。
私が倒れそうだ。。。


こたつに入ると、そこでおばさんが倒れたと母が言った。
饅頭を食べようとすると、それを食べてる最中におばさんが倒れたと母が言った。

天井に誰か居るような気がして私は顔を上げた。
勿論何もない。


重く暗い雰囲気が漂っている。
引っ越すには十分な理由だ。



お通夜が始まった。
お棺の中のおばさんは化粧のせいもあると思うけれど
元気なふっくらした顔でだし、綺麗にしたばかりの髪だったから
まるで生きてるみたいだった。


祭壇にはゴルフセットと、ウチの母と父と一緒にコースを回った写真が
飾られていた。


そのとき初めて、おばさんが居なくなった事を実感した。



人が目の前で突然亡くなってしまうのってどんな気持ちなんだろう。
ひょっとしたら助けられたかもしれない罪悪感に囚われて
激しく自分を責めるんだろうな。
少なくとも母はそういう人で、私はそういう人の遺伝子を受け継いでいる。